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日経新聞の取材を受けました。

2022年1月16日(日)付けの日経新聞に「着床前検査(PGT-A)」に関する記事が掲載されました。

 

 

昨年暮れに日経新聞の安藤記者が竹下レディスクリニックを訪れ、不育症とPGT-Aに関する取材を受けました。

大変分かりやすい図と表が載っていますが、少し追加説明をしたいと思います。

妊娠率が上がり流産率が下がるのですから出産率も上がりそうなものですが、記事にもあるように必ずしも「検査で出産率が高まるとは言い切れない」のです。それは移植できない受精卵が多いからです。

これまでのデータからPGT-Aと従来の体外受精・胚移植を比較すると以下の表のようになります。

治療開始 胚移植できた人 妊娠した人 出産した人
通常の体外受精胚移植 100人 95人 29人 21人
PGT-A 100人 40人 28人 25人

100人が同時に治療を開始すると、PGT-Aの方が出産率は高いもののその差はそれほど大きくないことがわかります。

また、記事の表にPGT-Aで「出産までの期間短縮」すると書いてあります。不育症患者さんの中には妊娠しやすい人も多いという事は、以前のブログにも書いたとおりです。このデータはあくまでも体外受精などの不妊治療が必要な場合の話であって、自然妊娠が可能な場合は出産までの期間も自然妊娠の方が早いという外国のデータもあります。

保険適用される体外受精・胚移植との兼ね合いも問題です。着床前検査は保険適用されないとされています。今の保険のルールでは、保険適用治療と同時に適用外の医療を行うと全額自費になってしまいます。おまけに、通常の体外受精・胚移植が保険適用になると助成金は廃止になりますので負担額は増加し、体外受精・胚移植のみと比較するとその差は歴然としています。

3月まで

4月以降

体外受精・胚移植のみ 50万円-30万円=20万円 50万円x0.3=15万円
体外受精・胚移植+PGT-A(5個検査したと仮定) 50万円+5X10万円-30万円=70万円 50万円+5X10万円=100万円

以上のように、PGT-Aを行うかどうかは、医学的な側面、経済的な側面、倫理的な側面など、いろいろな条件を勘案し決める必要があります。

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