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不育症を対象としたPGT-A/SR

いよいよ4月1日から体外受精・胚移植などの不妊治療が保険適用になります。これに伴い、日本産科婦人科学会が中心となり不育症(原因不明不育症、染色体転座に起因する不育症)や反復生殖補助医療(ART)不成功例を対象とした着床前検査(PGT-A/SR)の併用を可能とすべく先進医療に申請しました。しかし、3月の先進医療会議で先進医療Aとしての申請は却下されてしまいました。PGT-A/SRは重要な内容を含む医療であるので、より厳密な患者登録やモニタリング、統計解析を行いその医療の有効性を示さなければならない先進医療Bとして改めて申請するように指示があったとのことです。医療としての重要性が否定されたわけではありませんが、より厳格な先進医療Bでの申請はハードルが高く、認可までの道のりはやや遠のいた感があります。

その結果、せっかく体外受精本体の治療が保険適用となっても、PGT-Aを併用する場合は体外受精も含めて全額自己負担になります。4月から特定不妊治療助成金も打ち切られますので、患者さんの費用負担は膨らみます。保険適用を見据えて治療を控えていた患者さんもあり、肩透かしを食らったように思っている方もいらっしゃるかも知れません。

しかし、PGT-Aがすべてではありません。これまでのブログでもPGT-Aに対する見解を書いてきたように、不育症の患者さんの中にはARTを必要としない方も多く、PGT-Aを予定していた方もこれを機会に一歩立ち止まって考え直してもよいかも知れません。ただ、年齢が上がると妊娠はしてもやはり流産に終わることも多くなりますので、PGT-Aを選択肢に入れる必要が出てきます。

日本産科婦人科学会の臨床研究データを中間解析をすると、PGT-Aにより流産率が34.8%→8.8%に低下していました。これをみればPGT-Aの効果は明かですが、海外のデータを見ると若い世代では必ずしもPGT-Aの効果が確認されていません。したがって、自然妊娠が可能な不育症患者さんがPGT-Aを受けるかどうかは、妊娠しやすさ(妊娠するまでの時間や不妊治療の必要性などから評価)、流産回数、年齢などを考慮して判断する必要があります。

一方、これまでARTを受けてきた人で年齢が40歳を超えているような場合には、PGT-Aが有効(流産率を低下させるという意味で)である可能性が高く、経済的に余裕があるならばPGT-Aを選択すべきでしょう。

竹下レディスクリニックではARTは行っていませんので、PGT-Aの詳細に関することはARTクリニックにお任せしますが、逆に客観的な視点から公平な目でPGT-Aの可否などに関するご相談に対応できると思います。

 

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