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抗カルジオリピン抗体の初回測定値が高値の場合再検は不要

◆日本医科大学産婦人科の不育症研究チームによりまとめられた抗リン脂質抗体検査に関する論文がJournal of Reproductive Immunologyという国際学術誌に掲載されることになりました。以下、論文の要旨について解説したいと思います。

・抗リン脂質抗体症候群に診断基準では、抗カルジオリピン抗体のような抗リン脂質抗体が一度陽性になっても、12週間以上間隔を空けて再度陽性になることが診断の条件となっています。抗リン脂質抗体症候群と診断されたら、次回妊娠で流産や死産を防止するためには低用量アスピリン+ヘパリン療法が必要となるため、正しい診断を行うことは極めて重要です。しかし、少しでも早く子供を望むカップルにとって、再検まで12週間(3カ月)待たなければならないというのは酷な話です。

・そこで、われわれは過去のデータを解析したところ、初回の抗カルジオリピン抗体の抗体価がある一定の値より高い場合は、12週間経って再検しても陽性になる確率が非常に高いことを見いだしました。

われわれの解析では、再検で再度陽性になる抗体価のカットオフ値は、

  • 抗カルジオリピン抗体IgG≧15U/mL(99.1パーセンタイル値)
  • 抗カルジオリピン抗体IgM≧11 U/mL(99.2パーセンタイル値)

でした。

・最近、当院で依頼しているSRLでは、抗カルジオリピン抗体の測定キットが変わり正確な値は分析中ですが、99パーセンタイル値が、

  • 抗カルジオリピン抗体IgG:12.4 U/mL
  • 抗カルジオリピン抗体IgM:20.9 U/mL

ですので、これを若干でも上回る場合は12週間待つことなく抗リン脂質抗体症候群と診断してよいと思われます。

◆この知見は、一刻でも早く妊娠を望むカップル、特に女性の年齢が高いカップルにとって朗報になると思われます。

 

◆今回の解析にはループス・アンチコアグラント、抗β2GPI抗体は含まれていません。

・抗β2GPI抗体は抗体としての性質や測定原理から考えて、抗カルジオリピン抗体と同じような態度を取ることが予想されますので、99パーセンタイル値を相当程度上回った場合には再検は不要と考えてよいかも知れません。

・ループス・アンチコアグラントは、測定原理が異なり基準値の設定も検査センターによって異なりますので、今回の検討から外しました。ループス・アンチコアグラントには様々な測定法がありますが、当院で特に陽性率が高いのはAPTT法によるものです。APTT法では変動率も大きいので、こちらは再検が必要だと考えています。

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