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原因不明不育症に対するβ2GPIネオセルフ抗体検査について

不育症の重要な原因のひとつに抗リン脂質抗体症候群があります。AMED研究班の統計によると、不育症の患者さんで抗リン脂質抗体(ループス・アンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体、抗β2GPI抗体)が陽性であった人は8.7%に上ることが分かっています。臨床的には抗リン脂質抗体症候群を限りなく疑う症例でも、これら抗体がすべて陰性であることは決して珍しくありません。こうした症例は、血清学的陰性(抗体陰性)抗リン脂質抗体症候群(SNAPS)と呼ばれています。

SNAPSでは、抗体が全く存在しないのではなく、未知の抗リン脂質抗体があると考えられています。その後、前出3抗体の他にも不育症との関連が示唆される抗体が見つかっており、抗PE抗体や抗プロトロンビン(PS/PT)抗体等がそれに相当します。その他にも多くの抗リン脂質抗体があると考えられていますが、そのひとつがβ2GPIネオセルフ抗体です。

β2GPIという糖タンパクがHLAと結合した複合体に対する抗体がβ2GPIネオセルフ抗体で、神戸大と大阪大の研究グループによって発見された新しい抗リン脂質抗体です。

神戸大の研究グループによると、不育症の女性227人についてβ2GPIネオセルフ抗体を測定したところ、52人(23%)の患者で陽性となりました。さらに、日常的に行われている不育症の原因を調べるための検査を行っても原因が分からない不育症女性は過半数の121人を占めましたが、そのうち24人(20%)でβ2GPIネオセルフ抗体のみが陽性という結果でした。そこで、当クリニックでは臨床的抗リン脂質抗体症候群(3回以上の初期流産、10週以降原因不明胎内死亡(死産))で通常の抗リン脂質抗体検査が陰性の症例にβ2GPIネオセルフ抗体検査を行ないます。

所要日数:約2週間

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